ここいろhiroshimaの物語 #05

周りに頼っても
大丈夫

あっきーが結婚
喜びたいのに、喜べない

自分の安全基地を構築し直す、さーちゃん

2021年10月、あっきーから「結婚する」という報告を受ける。大事なパートナーがいることは聞いていたが「結婚」という言葉を聞いて、さーちゃんは一気に動揺した。

当時、さーちゃんはあっきーのパートナーとも面識がない状態だったので、自分に何も相談のないまま突然家族が増えることが決まったようなショックがあった。
さらに「ここいろ」という自分の安全基地が変わってしまうような、土台から揺れるような感覚に襲われていた。

これから「ここいろ」はどうなっていくんだろうか。
隣でどんどん動いているあっきーを見ながら不安を感じるさーちゃん。あっきーのプロポーズは無事成功し、ここいろのみんなはお祝いムード。でも、素直に喜びたいのに、喜べないさーちゃんがいた。

地域の人に相談、頼っても大丈夫なんだ

さーちゃんは、自分の人生で「結婚」という選択肢を今は選べない(日本では同性婚は認められてないため※2024年時点)。結婚に向かって突き進んでいくあっきーを間近で見る中で、自分は大事なパートナーができても一生添い遂げるということはないだろうと、心のどこかで勝手に自分が諦めていたことに気付き始めた。

そのタイミングに輪をかけて家賃が上がったり、自分の貯金も底をつき始め、生活の基盤も揺れ始めた。 まずは、自分の基盤から立て直そう。さーちゃんは自分自身のことを正直に地域の人に相談し、いろんな仕事を引き受け始めた。安く住ませてもらえる家も紹介してもらった。

自分から相手を頼っていくと、色んな人が快く手を貸してくれて、「頼っても大丈夫なんだ」「何とかなるじゃん」と自然と思えた。

かけがえのない仲間
一緒ならチャレンジできる

ここいろを始めて4年余り、
基盤が揺らいだタイミングで気がついた

その当時さーちゃんが受けていたワークショップの中で、自分の人生で伝えたいことをプレゼンする機会があった。今の自分が1番伝えたい事はなんだろう。

真剣に自分と向き合って出てきた言葉は「あなたには一緒に冒険する仲間がいますか?」だった。
人生をともに冒険する仲間。ひとりだったら勇気の出ないことも、一緒ならチャレンジできる。
そんな仲間がいることの心強さを私は伝えたいと思った。

その瞬間、あっきーが「一緒にやろう」と誘ってくれた場面のことを思い出した。あっきーと過ごした日々はさーちゃんにとって、かけがえのない仲間との冒険の日々だった。

ずっとひとりぼっちで仲間はいないと思っていた自分に、あっきーというとても大切な仲間ができたこと、そしていつの間にかたくさんの仲間に囲まれながら生きはじめていたこと。もう「ここいろ」を4年ほどやっていた頃だったけど、その事実にさーちゃんはこのタイミングで気づいた。

ここいろ会で
自分の話をきいてほしい

気づいた瞬間、涙が止まらなくなった。プレゼンの出来はイマイチだったけど、そんなこと誰も気にしていなかった。ただその場にいて、みんなと笑い合っているだけで、幸せを感じている自分がいた。

この感覚をここいろのみんなとも味わいたい。
自分のことをここいろのみんなに聞いてほしい。

そう思ったさーちゃんは、あっきーとここいろで関わってる人たちに「ここいろ会で、自分の話をきいてほしい」とリクエストした。
みんな快く応えてくれた。

どの人の声も、大事に扱って尊重し合える

いつもお世話になっているハチドリ舎で場所を借りると、20~30名の仲間たちが聞きに来てくれた。みんなで1つの輪になって、さーちゃんの声に耳を傾けた。ゆっくりゆっくりと自分の言葉を紡いでいくと、自然と涙がこぼれた。

「自分はひとりじゃない、仲間がいるって思えるようになったのは、みんなのおかげ。本当にありがとう。」みんなも聞きながら泣いていた。 これまでは主催者として「ここいろ」に居ると、どうしても話をきく側になることが多かったが、自分の話をみんなに聴いてもらうことで、「ここいろ」という安全基地が再構築された感覚がした。

どの人の声もみんなで大事に扱って、尊重し合える。それが例え主催者の自分の声であれ表現していいし、聞いてもらえる。「さーちゃんのことが知れて嬉しかった」「話してくれてありがとう」そんな風に声をもらって、よりみんなとの関係が深まった感じがした。