ここいろhiroshimaの物語 #04

ここいろ
解散の危機

さーちゃん、
人生2度目の休職期間

自分でも、どうしたらいいのか分からない

2020年秋から、さーちゃんは焦っていた。ここいろの活動と同時にはじめた神石高原町地域おこし協力隊の任期が2021年3月末で終わりを迎えるのが見えてきて、これからどうしようと悩んでいた。

ここいろhiroshimaの活動だけでは、まだ生活できるだけの収入はない。地域の人も心配してくれて、いろいろと仕事を紹介してくれた。 でも、当時のさーちゃんは「やりたくない」の一点張りで地域の人の申し出を受け入れられず、自分でもどうしたらいいのか分からないままだった。

「任期が終わった後は、何もしない時期をつくろう」と、自ら2ヶ月間休むことを決め、人生2度目の休職期間に入った。

本来の自分を取り戻す体験

休むと不思議と人生に必要な変化が起きてくる。さーちゃんは、幼い頃から大好きだった自然の中でたくさん過ごし、自分自身を取り戻していった。

森の中でオオカミになって仲間とともに冒険する「Be Wolf Camp」に参加したり、神石高原町の山で自分の火をつくったり、幼い頃に過ごした大好きな山へ帰ったり、とにかく自分が自分らしくいられる場所で自分が無意識に抑えこんでいたパワーを解放し、本来の自分とつながっていった。

この期間を過ごすまでは、なんとなく自然が好き、小さい頃よく遊んでた、ぐらいの感覚だったけど、こんなにも自然が自分にとって大事な存在だったことを、このときさーちゃんははじめて自覚した。

フクロウと
クジラからのメッセージ

何かがこみ上げてきて、涙が止まらない

そんな風に過ごす中で、さーちゃんはフクロウという動物とご縁が繋がった。神石高原町の山の中で火を焚きながら野宿をした時、フクロウの鳴き声とともに自分がつくった火の中心にある熾火とフクロウの目が重なるビジョンを見た。

それ以来、毎日のようにフクロウのサインが日常に現われ、どこに行ってもフクロウにまつわるものを見聞きする不思議な日々を過ごした。そして、フクロウはさーちゃんをクジラへとつなげてくれた。

美術館でクジラの彫刻を見た瞬間、さーちゃんは自分の肚の奥の方が震えて、涙が止まらなくなった。
クジラの目を見るとなぜだか分からないけど、何かがこみ上げてきて涙が止まらない。

自分のやるべきことが分かった瞬間

そして、猛烈にクジラに会いたくなったさーちゃんは下関にある「海響館」という水族館へ行った。そこで出逢ったクジラから、さーちゃんは大事なメッセージを受け取った。

「クジラさん、今まで地球を守ってくれてありがとう。今度はわたしが地球を守ります」
突然、肚の奥の方から、声が飛び出してきた。一体何が起こったのか、どういうことなのか全く分からず、頭はパニック状態。

でも、心は分かっていた。これは自分にとってすごく大事なことで、人生をかけて自分がやるべきことなんだ。 さーちゃんにとって、自分のやるべきことがはじめて分かった瞬間だった。やり方もなにも分からないけど、これは自分がやることなんだ。と、力が湧いてきた。

知ってほしい気持ちと、分かってもらえない恐怖

同時に、あっきーの顔が浮かんだ。
これは、あっきーに話さないといけない。自分にとってすごく大事でやる必要があることが分かったことをあっきーに知ってほしい気持ちが半分。

でももう半分は、伝えても分かってもらえないかもしれない、大事に扱ってもらえないかもしれない、伝えたら最後、私たちは離れてしまうかもしれない。そんな恐怖が湧いてきた。

「ここいろを離れる」
と伝えた

ものすごく怖い
でも、本気の気持ち

ここいろhiroshimaと自分の人生、どっちか選ばないといけない。そう思い込んでいたさーちゃんは、自分はここいろhiroshimaを離れないといけないと思った。

自分の人生を生きはじめるには、それぐらいの覚悟でやらないといけない。ものすごい怖い気持ちであっきーに話をした。

自分の身に起きたことをあっきーに全て話して、そして「ここいろhiroshimaを離れる」と伝えた。あっきーは驚きと同時に寂しそうな不服そうな顔をしていた。

「離れるってどういう事?」とあっきーから聞かれたとき、それがどういう事なのかさーちゃんは自分でもよく分かっていなかった。

ふたりでやるから「ここいろ」
話し合うのが大事なんじゃない?

本気で気持ちを伝えたら、あっきーは否定もせず馬鹿にもせず、話を全部聞いてくれた。やりたいことも応援してくれた。

その上で「自分は、ここいろを辞めるときは自分が全部やり切って沖縄に帰るときだと思ってる。
そのぐらいの覚悟でやってる。2人でやるからここいろだし、ここいろやりながらでもできるようにしていけるように、2人で話し合うのが大事なんじゃない?」
と、あっきーも自分の想いを本気で語ってくれた。

離れてしまうと思ったあっきーとの関係を、ここいろという大事な居場所を、あっきーが守ってくれた。ここいろを続けながらでも、自分の道を歩んでいけるんだ。

そう分かってから、家族との関係も変わっていった。
さーちゃんは、家族の中で一番幼い自分には家族を守る力がない、頼ってもらえないと思っていたが、その頃から自然と家族を守ったり頼られる側に変わっていった。
あっきーが「ここいろ」を守る姿を見せてくれたことで、さーちゃんも家族を守れるように少しづつ変わっていけた。