ここいろhiroshimaの物語 #03

ぶつかり合って
生まれたもの

コロナで直面した危機

大切な場所を守りたい

2020年5月、新型コロナウィルスの影響でここいろの活動が全てストップした。
さらに日本中で緊急事態宣言が出されていた時期、私たちがいつもお世話になっている『Social Book Cafeハチドリ舎』が存続の危機に陥った。

ハチドリ舎では社会課題についてのイベントが毎日のように行われていて、ここいろhiroshimaもハチドリ舎との共催で、セクシュアリティバーというイベントを毎月開催していた。

私たちにとってもすごく大事な場所であり、ここで出逢えた仲間がたくさん居る。
セクシュアリティだけでなく色んな背景を持った方と出逢い、お互いを知る大切な場所。

そして何よりも、私たちにとって大切な人であるオーナーの安彦さんの想いが詰まったハチドリ舎がなくなるのは嫌だ!いま、自分達にできることをやりたいと思った私たちは、「ハチドリ基金」を立ち上げることを決めた。

時間は在るのに、なぜか進められない

自分たちでホームページをつくり、お金を募るための仕組みまでは考えた。しかし、いざ作ろうとなると、思うように進まない。進めたい気持ちが強いのに、なぜか進められない。一刻も早く作ってハチドリ舎を支えたい。なのになぜ、進められないんだろう・・・。

その頃のさーちゃんは、神石高原町で地域の方と仕事をしたり、今まで通り、人とのつながりを保ちながら過ごしていた。一方で、あっきーは、緊急事態宣言中でここいろの活動が全てなくなり、介護の仕事もストップしてずっと家に居た。 あっきーの中に先の見えない不安や、孤独を感じる恐怖感が渦巻いていた。
時間はたくさんあるはずなのに、物事が進められないもどかしさが募っていった。

でも、うまく言葉にできない。
そして、自分の中で消化できないその気持ちの矛先は、さーちゃんに向いた。

それぞれの
「ぶつかり合う」

腹から声出せ!!
ぶつかり合えばいいじゃん!

この時期は直接会うことは出来ずにLINEでやり取りを続けていて、さーちゃんが「あっきー、何か思っていることあるんじゃない?」と伝えた。それに対して「別に何も思っていないし、さーちゃんには関係なくない?」とあっきーは返事をした。

やっぱり何かがおかしい、このままではいけない気がすると思ったさーちゃんは、「ちゃんと話そう。待ってるから、あっきーのタイミングで電話して!」と伝えた。

電話がつながっても、あっきーは無言のままだった。言葉が出てこない。
「関係ないとか言われたらうちは悲しい。思っていることあるんでしょ!?」
そう話すさーちゃんに、「だって関係ないし。おれの問題じゃん・・・」とあっきーは伝えた。

その言葉を聞いたさーちゃんは「関係ないわけないじゃん!!!」「腹から声出せ!!ぶつかり合えばいいじゃん!」と、真正面から向き合おうとした。

あっきーにとって
「ぶつかり合う」とは生死に関わること

「ぶつかるって、何?かんたんに言うけどさ、、」あっきーは、ぽつぽつと話し始めた。

「人と人がぶつかり合うってことは、生死に関わることなんだ。 幼い頃から、両親がぶつかり合っているのを見てきたから、【ぶつかり合う】ってことは、自分にとってすごく怖いことなんだ。暴力になる。何の解決にもならない。だから、ぶつかり合えば良いなんてことを簡単に言わないでほしい・・・」

それを聞いたさーちゃんは、「あっきーにとって、ぶつかり合うってことはそんなにも怖いことだったんだね。でもそうやって本音で話してくれたことが、うちがやりたかった【ぶつかり合う】ってことなんだよ。だから嬉しい。うちをもっと頼ってほしい」と伝えた。

自分の大切にしたいことを、伝え合うことが出来た

さーちゃんは、ずっともどかしかったし悲しかった。自分はあっきーに頼りにしてもらえない存在なんだと思っていた。家族の中でも、末っ子の自分は、兄のことで家族が大変なときでも力になれない。役に立つことができない、頼りにしてもらえていない自分を感じていた。

でも、いまあっきーは自分に本音を伝えてくれた。そして、自分も大事にしたいことを伝えることが出来た。「これがやりたかったんだ」と、さーちゃんは思った。

あっきーも、人生で初めて人と真正面で向き合うことをした。今までの自分は、向き合うことを恐れて、ぶつかり合うことを恐れてずっと生きてきたような気がする。 これがぶつかり合うってことなのか。話し合うことで解決できるんだ、と自分の中での感覚が変わったような体験だった。

大事に想っている人が
こんなにも居る

ハチドリ舎を応援したい人が
どんどん増えていった

ふたりで話し合った後は、滞っていたものが一気に解消されたように、不思議なぐらいハチドリ基金のことが進んだ。基金用のホームページを立ち上げると、ハチドリ舎を応援したい人がどんどん増えていった。

結果、お金で支援できたことももちろん嬉しかったが、それ以上に、「ハチドリ舎」という場所を私たちと同じように大事に想ってくれている人がこんなにも居るんだということを実感出来たことがすごく嬉しかった。 これからもハチドリ舎が続いてほしい、みんなで守っていきたいと強く感じた。

危機が成長の機会に、
関係性がより深いものになった

「ハチドリ基金」というプロジェクトを通じて、私たちの関係性もより深いものになったし、「ここいろhiroshima」にとっても大事な時間を過ごすことができた。

コロナ禍ではあったが、少し落ち着いてくると講演依頼も再び入ってくるようになり、居場所づくりの活動も再開したことで参加者が少しずつ増えていった。